実際どうなの?薬剤師過剰論
- 2016.8.9
- 職種による様々な不安
薬剤師は既に過剰?
薬剤師が過剰になっていると言いますが、本当にそうなのでしょうか。実は数字上では何故か「薬剤師過剰時代」に突入しているのです。厚生労働省の調べによると、薬剤師人数は単純計算でも2011年で75000人、2014年では84000人が過剰になっていると報告しています。数字上では既に供給と需要バランスが崩れており、薬剤師が過剰になっているのです。推移を見る限り、2005年から80000人以上の薬剤師が過剰となっているのですが、現在でもなぜかチェーン展開している調剤薬局やドラッグストア、中小病院は慢性的に薬剤師不足に悩んでいます。更に、地方の小規模薬局などは深刻な薬剤師不足に陥り、高額な年収を提示するも募集が集まらず、ついには閉店へ追い込まれてしまう状況です。このようなギャップはなぜ起っているのでしょうか。
過剰なのになぜ足りていないのか
数字上では過剰となっている薬剤師ですが、実際の現場では慢性的な人材不足となっている、この矛盾はどこから生まれているのか検証してみたところ、以下の事が原因となっているようです。
まずは薬剤師免許を使わずに仕事に就いている人が多い点です。薬剤師は医師とは違い、様々な進路があります。多くは病院、調剤薬局やドラッグストアに就職しますが、その他には製薬会社や卸売業、大学や衛生行政など多種多様な働き方があります。つまり、薬剤師の知識は必要でも、薬剤師免許を必要としない働き方をする人が多いのです。調べによると、全体の約30%は薬剤師免許を必要としない職に就いている事が判明しています。
そして、地域格差も原因となっているようです。労働省の調査では、2010年末の人口10万人対薬剤師人数は全国平均で209人ですが、薬剤師人数のもっとも多い徳島県ともっとも少ない沖縄県で比較すると、2.4倍も格差が生じています。また、大都市である東京や大阪では薬剤師が充足されていると言いますが、首都圏でも多くの薬剤師募集を目にします。この求人を見る限りでは、薬剤師が充足されているとは言えないのではないでしょうか。確かに地方の深刻な薬剤師不足からみれば足りているとは思いますが、中小企業では依然として多くの薬剤師を必要としています。
3つ目としては女性薬剤師の割合が高い点です。薬剤師全体の60%を女性が占めており、就職後4~5年で結婚、出産などで休暇や退職が増えます。出産後や育児休暇明けに仕事へ復活する女性薬剤師も多くなりましたが、女性比率の高さが社会運営に大きな影響を与えるのは間違いないようです。
以上の要因が重なり、薬剤師免許を持っている人は過剰でも、実際現場で働く薬剤師は不足しているのが現状のようです。
プラスアルファのスキル
今後価値ある薬剤師になるには、免許を持つだけではなく、何ができるかが問われてきます。つまり、調剤以外にどんな仕事ができるか迫られるという事です。薬剤師免許を持っていれば食べていける時代は終わりを迎え、スキルを持った薬剤師が食べていける時代になってくるでしょう。薬剤師が持っておきたいスキルとは、患者さんや医療従事者へ薬剤師ならではの価値を提供できる事です。薬剤師の皆さまは今一度、それについて考えるべきだと思います。薬剤師として生涯働きたいのであれば、外国語の習得や精神科専門の薬剤師など、他の薬剤師と差別化できるスキルを持つ事を考えるべきだと思います。